アルコールスプレー、除菌スプレーを日本で製造するために必要な要件を説明します

皆さん、こんにちは。群馬県邑楽郡大泉町の行政書士事務所 行政書士オフィスかわしまです。

こちらの記事では、今では普段使いが当然となったアルコールスプレー、除菌スプレー等を日本国内で製造する場合に注意すべき点を説明させて頂きます。コロナパンデミックが起こって以来、私たちの生活は、アルコール除菌、殺菌が日常のルーチンになっています。それだけ需要があるということですので、アルコールスプレーの製造を会社として検討されることがあっても、さもありなんといったところです。そんな方は、こちらで説明されている事項に念頭に入れて頂き、事業をスタートさせてください。

目次

アルコール製品の使用目的による区分について

まずはじめに理解しておくべきことは、日本国内においてアルコールスプレーを製造・販売するビジネスを立ち上げる、あるいは事業として行う場合、「そのアルコールスプレーを何(誰)に対して、どのような目的で使用するか」によって、適用される法律、必要な許可、施設要件が180度異なります。この「区分(カテゴリー)」を誤ると、意図せず法律違反(薬機法違反、無許可製造など)になってしまうため、事前の正確な理解が不可欠です。

アルコールスプレーの製造要件を決める最大の要因は、「薬機法(医薬品医療機器等法)」における製品の区分です。パッケージの表示や広告で「どのような効能・効果を謳うか」によって、以下の3つに分類されます。

区分主な使用目的・表現必要な許可難易度・規制
① 医薬品・医薬部外品「手指の消毒・殺菌」「ウイルス消毒」など、人体に対する効果を謳うもの。・製造販売業許可

・製造業許可

・品目ごとの承認
参入難易度は非常に高いです。
(GQP/GVP/GMP基準の遵守が必要)
② 化粧品「手指を清潔にする」など、清浄を目的とし、殺菌・消毒を謳わないもの。・化粧品製造販売業許可

・化粧品製造業許可
参入比較的難易度が高いといえます。
(殺菌などの薬効表現は一切不可)
③ 雑貨(住居用・キッチン用)「テーブルの除菌」「まな板の除菌」など、物に対する使用に限定するもの。特になし(薬機法上の許可は不要)参入難易度は低いです。
ただし、人体への使用を暗示するのはNG)

薬機法上の要件について(アルコールスプレーを医薬品・医薬部外品・化粧品として製造する場合)

人体(手指など)に使用するアルコールスプレーを製造する場合、都道府県や国(厚生労働省/PMDA)からの許可・承認が必須となります。ここでは、「指定医薬部外品(外皮消毒剤)」および「化粧品」をベースに解説します。

化粧品製造販売業許可、化粧品製造業許可の取得をご検討されている事業者様はこちらをご覧ください。

医薬部外品製造販売業許可、医薬部外品製造許可の取得をご検討されている事業者様はこちらをご覧ください。

(1) 「製造販売業許可」と「製造業許可」のW取得が必要です

日本でこれらを製造・流通させるには、1つの会社で、あるいは提携先と分担して以下の2つの許可を取得しなければなりません。

  • 製造販売業許可(総元締めとしての許可):製品を市場に出荷し、安全管理や品質保証に責任を持つための許可です。主に「オフィス(本社)」に対して与えられます。
  • 製造業許可(工場としての許可):実際に製品を調合、充填、包装、保管するための許可です。主に「工場・作業場・倉庫」に対して与えられます。
(2) 人的要件(3つの責任組織の設置)について

製造販売業の許可を得るためには、社内に専門知識を持つ責任者を配置しなければなりません。これを「三役(さんやく)」と呼びます。

  • 総括製造販売責任者: 薬剤師、または大学で薬学・化学を修めた者など(全体の統括)。
  • 品質保証責任者: 製造管理・品質管理(GQP)に責任を持つ者。
  • 安全管理責任者: 出荷後の安全情報・副作用などの収集(GVP)に責任を持つ者。
(3) 施設・構造設備要件(製造業許可のハードル)について

製品を実際に製造・充填する場所には、非常に厳格な「構造設備基準(GMP基準など)」が課せられます。

  • 区画の分離: 汚染を防ぐため、原材料の保管場所、調合室、充填室、包装室、製品倉庫が明確に壁などで区画されていること。
  • 衛生的な環境: 壁や床が洗浄しやすく、防塵・防虫・防鼠(ネズミ)対策が徹底されていること。手洗い設備や更衣室が適切に配置されていること。
  • 検査設備の保有: アルコール濃度やpH、微生物汚染がないかを自主検査できる試験検査室(または外部試験機関との契約)があること。
(4) 品目ごとの「承認(または届出)」について

許可を得た工場があっても、自由にアルコールスプレーを作れるわけではありません。医薬部外品と化粧品とで異なりますが、事前の対応が必要となります。

  • 医薬部外品の場合: 厚生労働省(またはPMDA)へ製品ごとに「承認申請」を行い、成分の有効性や安全性の審査を受ける必要があります(非常に時間がかかります)。
  • 化粧品の場合: 製造販売届出をあらかじめ提出します。

消防法上の要件(危険物としての規制)について

アルコール(エタノール)は、非常に燃えやすい性質を持っています。そのため、薬機法上の区分が「医薬品」であれ「雑貨」であれ、アルコール濃度が高ければ一律で消防法の「危険物」として規制を受けます。

(1) 危険物該当性のライン:濃度60%(重量比)

消防法において、エタノール(水溶液)は「第4類 引火性液体(アルコール類)」に該当します。その基準は「アルコール濃度が60重量%(wt%)以上」であることです。
※一般的な消毒用アルコールスプレーは70%〜80%(体積比/vol%)程度、重量比でも60wt%を超えるため、ほぼ例外なく消防法の「危険物」に該当します。

(2) 数量による規制(指定数量)

危険物を取り扱う場合、その「量」によって必要な施設の要件が激変します。アルコール類(第4類)の指定数量は「400リットル」です。

  • 指定数量の1倍未満(400L未満):市町村の「火災予防条例」が適用されます。通常のテナントや倉庫でも、届け出や簡易的な防火措置(換気、火気厳禁の掲示、消火器の設置など)で製造・保管が可能な場合があります。
  • 指定数量の1倍以上(400L以上):消防法に基づき、正式に許可された「危険物製造所」または「危険物取扱所」(保管する場合は危険物倉庫)でなければ、1滴も製造・貯蔵・取扱ができません。
(3) 危険物製造所・取扱所のハードル

もし工場内に400L以上のアルコールを常時保有して製造する場合、以下のような極めて厳しい建築・設備要件をクリアし、消防署長の許可を得る必要があります。

  • 建築物の構造: 壁、柱、床、梁を耐火構造とし、屋根は軽量な不燃材料(万が一の爆発時に圧力を上に逃がすため)にする。
  • 床の構造: アルコールが地下に浸透しないよう、コンクリート等で覆い、適当な傾斜と「ためます(集液溝)」を設ける。
  • 電気・換気設備: 引火を防ぐため、すべての照明やスイッチ、モーター類を「防爆仕様(火花が出ない構造)」にし、アルコール蒸気を屋外の安全な高所に排出する局所排気装置を設ける。
  • 保有空地: 建物の周囲に、火災延焼を防ぐための一定の幅の「空地(何も置いてはいけないスペース)」を確保する。
  • 危険物取扱者: 国家資格である「危険物取扱者(甲種または乙種4類)」を設置・選任しなければならない。
消防法に関するご質問お気軽に!!!

当事務所では、消防法に関するご質問等対応させて頂きます。自社でアルコールを扱う上で大丈夫かどうか不安な点がある、危険物を扱う注意点が分からない、なんて場合、お気軽にご相談下さい。

アルコール事業法・酒税法上の要件について(原材料の調達)

アルコールスプレーの主原料である「エタノール」をどこから仕入れてどう使うかについても、日本の税制と産業保護の観点から厳しいルールがあります。

(1) 課税アルコールか、免税(特定)アルコールか

お酒に使われるエタノールには高い「酒税」がかかります。工業用や消毒用スプレーに酒税がかかると高額になりすぎるため、経済産業省が管轄する「アルコール事業法」に基づき、以下のいずれかの方法で原材料を調達します。

お気軽にお問合せ下さい!!!

こちらに記載しました通り、特定アルコールを使用するためには、「アルコール使用許可」を取得する必要がありますし、使用実績の報告義務等が発生します。許可の取得が難しそうだ、帳簿の管理が難しそうだ、そのように感じられた場合は、お気軽に当事務所にお問合せ下さい。当事務所でサポートさせて頂きます。

  • 方法A:特定アルコール(免税)を使用する方法です。酒税相当の額が課されていない工業用のアルコールです。これを使用・製造・販売するためには、経済産業局から「アルコール使用許可」などの取得が必要となります。また、帳簿の管理や年間の使用量の報告義務が生じます。
  • 方法B:変性アルコール(不可飲処置されたもの)を使用する方法です。エタノールに、わざと人間が飲めないような苦味成分や添加物(イソプロパノールなど)を混ぜたものです。これにより「お酒(飲料)」への転用が不可能とみなされ、酒税やアルコール事業法の厳しい「使用許可」を受けずに、通常の原材料として比較的スムーズに購入・製造ができます。市販の安価な除菌スプレーの多くに「イソプロパノール配合」と書かれているのはこのためです。

アルコールスプレーを雑貨(住居用・キッチン用)として製造する場合の要件について

もし、薬機法の許可や危険物施設の用意が難しく、「最もスピーディーにスプレーの製造を始めたい」という場合は、「雑貨」としての製造・販売一択になります。

(1) 必要な手続きについて

雑貨としての扱いですと、必要な許可がなく、非常にシンプルです。

  • 薬機法上の許可: 不要です。一般的な町工場や自宅の作業場(※消防法に違反しない範囲)でも製造・ボトリングが可能です。
  • 届出: 行政への事前届出も原則としてありません。
(2) 「雑貨」にするための絶対条件について

ただし、以下の要件(表示・広告の制限)を完璧に守らなければ、即座に薬機法違反(無許可の医薬品製造)として摘発されます。

  • 人体への使用を謳わない: パッケージや説明書、Webサイト等に「手肌に優しい」「手指の消毒に」「お出かけ時の手洗いに」といった表現を一切書いてはいけません。
  • 効能効果の制限: 「殺菌」「消毒」「滅菌」「ウイルス除去」などの医薬品的な言葉は使えません。使えるのは「除菌」「清浄」「消臭」といった、ターゲットを絞らない抽象的な表現のみです。
  • 用途の明記: 「用途:机、ドアノブ、キッチン周りの除菌」のように、対象が「物」であることを明確に消費者に提示しなければなりません。

※雑貨であっても「高濃度(60wt%以上)であれば、消防法の危険物規制」を受ける点、および消費者の安全を守るための「PL法(製造物責任法)」の対象になる点は、医薬品と全く同じです。万が一、容器が破裂したり、引火事故が起きたりした際の説明責任や損害賠償リスクに備え、製品安全データシート(SDS)の作成やPL保険への加入は必須要件と言えます。

アルコールスプレー製造のまとめ

これから日本国内でアルコールスプレーの製造を検討する場合、以下のステップで要件を確認・クリアしていく必要があります。

  • 用途の決定: 人体用(医薬部外品/化粧品)か、物用(雑貨)か。
  • 成分・濃度の決定: アルコール濃度を何%にするか(60wt%以上なら消防法対策へ、90vol%以上ならアルコール事業法対策へ)。
  • 原材料のルート確保: 変性アルコールを使うか、特定アルコールの使用許可を取るか。
  • 工場の選定・建築: 消防法(防爆設備・指定数量)および薬機法(構造設備基準)を満たす物件の確保・改修。
  • 人員の確保: 薬剤師等の責任者(薬機法)や、危険物取扱者(消防法)の採用・選任。
  • 行政申請: 保健所(薬務課)、消防署、経済産業局への申請・検査。

このように、アルコールスプレーの製造は、一見シンプルに見えても、「厚生労働省」「消防庁」「経済産業省(国税庁)」という3つの異なる行政機関の法律が複雑に絡み合うビジネスです。ご不安に思われる点がございましたら、当事務所にお気軽にお問合せ下さい。

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