化粧品の「収去」について説明します 化粧品製造販売業者様、化粧品製造業者様必見です

皆さん、こんにちは。群馬県邑楽郡大泉町の行政書士事務所 行政書士オフィスかわしまです。

当事務所では、化粧品を日本国内で製造販売するために必要となる「化粧品製造販売業許可」、日本国内で製造するために必要となる「化粧品製造業許可」の新規申請、更新申請の代行及びサポートを行っております。お気軽にご相談下さい。

こちらの記事では、化粧品製造販売業、化粧品製造業を行っていると、聞くことがあるであろう「収去」について説明致します。ただ、この収去、まったく聞いたことがないよ、なんて方もいらっしゃるかもしれません。この言葉を聞かずに済むに越したことはないのですが、どんなことなのか知っておくと、いざという時に役に立つかもしれませんよ。

この「収去」ですが、日本の医薬品医療機器等法(以下、薬機法)に基づき、都道府県の薬事監視員などが、品質・有効性・安全性を確認するために化粧品を無償で持ち帰る(採取する)行政検査の権限・行為のことです。「収去」という言葉は、日常ではあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、公衆衛生の向上と消費者の安全を守るための非常に強力かつ重要な法的手段です。

目次

収去の法的根拠と目的について

法的根拠(薬機法第69条)について

薬機法第69条では、厚生労働大臣、都道府県知事、あるいは保健所を設置する市の市長などが、必要があると認めるときに、薬事監視員に命じて製造販売業者や製造業者、販売店(小売店や卸売業者)に立ち入り、化粧品などの医薬品等を試験検査のために必要な分量に限り、無償で収去させることができると定めています。

ここでのポイントは、無償での採取ということです。通常、行政が民間企業の商品を押収・検査する場合、買い上げ(購入)の形をとることもありますが、薬機法に基づく「収去」は無償で行われます。これは、違法・有害な製品の流通を防ぐという強い公益性があるためです。

収去の主な目的について

化粧品の収去が行われる主な目的は以下の3点です。

  • 流通品の品質確保(市買調査・試買検査):市場に流通している化粧品が、承認・届出された通りの成分で製造されているか、品質が劣化していないかを客観的に検証する。
  • 違反品の排除:配合禁止成分(ステロイドや重金属など)が含まれていないか、あるいは許可されていない効果効能をうたった違法な製品(無承認医薬品の疑いがあるものなど)ではないかを検査する。
  • 健康被害の未然防止・拡大防止:消費者から「皮膚トラブルが起きた」などの苦情が寄せられた際、原因特定のために迅速に現物を確保する。

収去の具体的な流れについて

収去は、単に「お店の商品を勝手に持って行く」わけではありません。行政手続法および薬機法に基づき、厳格な手順に則って執り行われます。ただし、ここまで厳格にせず、あくまで事業者の協力の元といったスタンスで、依頼が来る場合もあります。私自身が経験したことがあるのは、この事業者の協力の元といったスタンスでの収去です。

① 立入検査と身分証明の提示

都道府県の薬事監視員(公務員)が、化粧品の製造工場、総発売元のオフィス(製造販売業者)、あるいはドラッグストアや百貨店などの販売店舗に立ち入ります。この際、監視員は必ず身分を示す「薬事監視員証」を提示します。

何らかの調査と並行して行われることもあります。また、突然、役所から電話でサンプル提示の指示があったなんて経験も実はあります。突然言われることもあるんですよね。

② 対象品の選定と数量の決定

検査の目的に応じた化粧品を選定します。収去できる数量は、試験検査に必要な「最小限の分量」と法律で定められています。例えば、成分分析のために3個〜5個のパッケージが必要な場合、その数量だけが対象となります。

③ 「収去証」の交付

薬事監視員は、無償で商品を受け取る代わりに、必ず「収去証」という公的な書面を事業者に交付します。ここには、収去した日時、品名、数量、収去を行った監視員の氏名などが記載され、事業者側にとっては「行政に製品を提出した」という証明書になります。

④ 地方衛生研究所等での試験検査

収去された化粧品は、各都道府県の「地方衛生研究所」や「国立医薬品食品衛生研究所」などの公的な試験検査機関に送られます。ここで、高度な分析機器を用いて成分分析や無菌試験などが行われます。

検査される主な項目について(何を調べているのか)

化粧品の収去検査では、主に以下の項目が厳格にチェックされます。不良な製品が流通されていないかのチェックです。消費者目線で考えた場合、消費者にとって、大変重要な行政側のチェックと言えます。行政側のチェックで問題が確認された場合、業者の処分、製品の回収といった結果になる場合もあります。

① 配合禁止成分・制限成分の有無

日本の化粧品基準では、配合してはならない成分(例:ホルモン、ステロイド、水銀、一部の防腐剤など)や、配合量が厳しく制限されている成分(例:紫外線吸収剤、タール色素など)が定められています。これらが基準を満たしているか化学的に分析します。

② 医薬品成分の不法混入(特に海外製・いわゆるドクターズコスメ)

個人輸入された化粧品や、一部の海外製化粧品(美白クリームやニキビ用化粧水など)において、日本国内では医薬品としてしか認められていない成分(例:ハイドロキノンを高濃度で含むもの、トレチノイン、ステロイド成分など)が違法に配合されていないかを調べます。

③ 微生物汚染(衛生面)

化粧品は肌に直接つけるものであるため、細菌やカビなどの微生物に汚染されていてはなりません。特に目元に使用する製品(マスカラやアイライナー)や、乳幼児向けの製品は、無菌性や防腐力が適切であるかが厳しく検査されます。

④ 表示・広告の適正性(法定表示)

製品のパッケージや容器に、薬機法で義務付けられている事項(製造販売業者の名称・住所、製造番号/ロット記号、全成分表示など)が正しく記載されているかを確認します。また、事実に反する誇大広告や、化粧品として認められる範囲を超えた効能効果(「シミが絶対に消える」「シワが完全に若返る」など)が書かれていないかも同時にチェックされます。

収去の結果と、違反が判明した場合の行政処分について

試験検査の結果、製品が法令に適合していれば特に行政指導はありませんが、違反が判明した(不適合となった)場合、事業者には極めて重いペナルティが科されます。何も行政側から連絡がない場合は、自社の製品が問題なかったんだなと考えてOKです。

違反の内容想定される行政処分・措置
健康被害の恐れがある成分の混入・製品の回収命令(クラスIまたはクラスII)
・製造販売業の業務停止命令
・許可取消
表示の不備・軽微な基準違反・製品の回収命令(クラスIII)
・改善始末書の提出、行政指導
無許可・無届けでの製造販売・告発(刑事罰)の対象
・製品の領置・廃棄

違反が発覚した場合、事業者は厚生労働省の「医薬品等回収情報」のウェブサイトなどを通じて、速やかに回収情報を一般に公表しなければなりません。自主回収(リコール)の公表です。これは、会社側にとっては大変マイナスに働くと予想されます。企業の社会的信用という点で、大きく失墜することになります。

事業者(メーカー・販売店)側に求められる対応について

行政の収去権限は強力であり、事業者は原則として収去を拒否することができません。 もし正当な理由なく立ち入りや収去を拒む、あるいは虚偽の答弁をした場合は、薬機法違反(検査拒否罪など)として罰則(罰金など)の対象となります。そのためにも、いざという時に、あわてずに済むよう、事業者は日頃から以下の備えをしておく必要があります。

  • ロット管理とトレーサビリティの徹底:万が一、自社製品が収去され違反が発覚した際、どのロットが・どこに・何個流通しているかを即座に把握できる体制を作っておくこと。
  • 相手方の確認と誠実な対応:薬事監視員が来訪した際は、必ず身分証を確認し、収去証の控えを厳重に保管する。また、監視員の質問に対しては正確かつ誠実に回答する。
  • OEM(製造受託会社)との連携:自社がブランドオーナー(製造販売業者)で、製造を外部に委託している場合でも、品質責任は自社にあります。日頃から製造工程の管理や成分分析データを共有しておくことが重要です。

まとめ

化粧品の収去は、「消費者の安全を守るための、行政による無償の抜き打ち検査」です。化粧品は毎日肌に直接塗布するものであるため、一歩間違えれば重篤な皮膚障害などの健康被害を引き起こすリスクを孕んでいます。行政がこの収去権限を適切に行使し、市場を監視し続けることで、消費者が日々安心して化粧品を購入し、使用することができています。事業者にとっては非常に緊張感のある行政手続ですが、業界全体の健全化と消費者の信頼維持には欠かせない制度と言えます。

事業者としては、こういった制度には積極的に協力していくべきです。また、日頃から、このような「収去」という行政側の対応があることを知っておくべきです。行政側からいつ何時、指示があるかわかりません。こういった制度があることを知っているだけでも、心に余裕を持てるかもしれません。

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